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「形だけなんだから、一番安いのにしたのよ。でも別にわかんないでしょ?」
穴になってしまった左目に、少しアンバランスな義眼をつけたまさねえちゃんが、玄関前でいつものように騒いでいた。
「ほんとはいらないんだけど、やっぱり穴が開いてたら、みんなびっくりするから。
そうそう、これ、ママレモンで洗っていいんだって!」
と、けらけら笑うまさねえちゃんをみて、もう、うるさいと感じることはなく、本当に私は尊敬していた。
そんなポジティブなまさねえちゃんが、唯一悲しそうに話すのが、髪の毛のことだった。がん治療中なのに、髪の毛がまだあることを、いつも自慢していたまさねえちゃんの髪の毛は、このころから、目だって抜け落ちるようになってきていて、所々がはげてしまっていた。
「ソラにもね、学校にこないでって言われたの・・・」
と悲しそうに話すのを聞いて、かつらを勧めたのだが、倹約家のまさねえちゃんは、とても悩んでいるようだった。
次の日、母と、かつらをプレゼントしようと話していたら、玄関口に髪をみじかく刈り上げたまさねえちゃんがげらげら笑いながら駆け込んできて、
「ちょっと聞いて!カイに髪の毛のこと相談したら、なんていったと思う?
お父さんのほうがはげてるから、大丈夫だよだって!だから面倒くさいし、やっぱかつらはしないどくわ」
と楽しげに話した。
でも数日後、かつらをかぶったまさねえちゃんが、うっすら涙を浮かべて玄関口に来て、
「カイが・・・カイが注文してくれてたの」
と本当にうれしそうに話していた。
それからのまさねえちゃんは、今までにまして精力的に、忙しく毎日を過ごすようになった。                                                     
今までの倍以上の人との付き合い、PTA会長としての活動、一度は川に落ちた子供を飛び込んで助け、警察から表彰されたりもしていた。
季節外れにもう一度咲く桜も、あの時以来毎年二度咲き、それをみたまさねえちゃんは、
「あの桜は私の目標。せっかくの命だから、たくさんいろんなことしたいの」
と、口癖のように言っていた。
その桜が、また二度目の開花をしたころ、学校から帰宅中のソラが、突然ストンと座り込み、そのまま立ち上がることができなくなった。
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急遽大学病院での入院となり、すぐに左目の眼球を摘出したまさねえちゃんを、恐る恐る母と見舞いに行った私だったが、病室からまだ遠い通路で、聞きなれた甲高い騒音を聞いて、笑ってしまった。
病室のドアを開けると、いつもと変わらない人間騒音のまさねえちゃんが、看護婦さんと、だんなさんの健太兄ちゃんの悪口で盛り上がっていた。
「あっ、みっちゃんもきてくれたんだ!目、取ったから、痛くなくなってすっきりしたよ!
もっと早く取ってもらっとけばよかったわ。それよりね・・・!」
そのあと1時間以上も健太兄ちゃんの悪口に付き合わされた、母と私は、ぐったりとしながらも、本当にほっとして家路についた。
数日後、また母と病院に行った私は、今度は笑い声ではない、珍しく怒った様子のまさねえちゃんの大声に驚いて、病室に飛び込んだ。
「いやだ!ガーゼ交換は絶対いや!!!
今度交換するときは全身麻酔をしてからにして!」
珍しくわがままを言うまさねえちゃんに驚いたが、摘出していない右目から、たくさんの涙をこぼしながら訴えている様子に、おかしいと感じた。
母もおかしいと思ったようで、ガーゼ交換がそんなに痛いものなのか確認してほしいと、看護婦さんにたずねた。
そんなはずはないのだけれどと、詰め所に確認に行った看護婦さんが、憤慨した様子で、婦長と若い女医と一緒に病室にもどってきた。
「ごめんなさい、間違えて下のガーゼを取ってしまいました。」
若い女医が一言そう言い、うつむいた。
本来は、眼球を摘出した後、穴になってしまった部分にガーゼを貼っているが、交換は、そのガーゼの上に乗せているだけの、薬をしみ込ましたものを替えるだけで、張り付かせているほうを剥がすときは、麻酔を行ってから行うものだそうだ。
経験の浅い女医は、それを知らずに、無理やりそのまま下をはいでしまったらしい。
説明を受けただけで、痛みを考えると鳥肌が立ってしまった私と母は、
「なんてことを・・・」
と抗議しかけたが、その言葉をすぐにさえぎるようにまさねえちゃんが、
「よかったあ!やっぱりそうよね。じゃあ今度からあんなに痛くないのよね」
とうれしそうに看護婦さんに話しかけた。
母も私も、看護婦さんまでもが、女医を責めようとしたのだが、まさねえちゃんは
「もうこれから痛くないならいいのよ」
とまったく責めることもせず、またいつものようにけらけら笑っていた。
それからしばらくして、またいつものまさねえちゃんが戻ってきた。

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